5代目の山岳迷走記第2章 山岳迷走記の目次ページへ
A滑川・姥湯周遊コース(日帰り)
今回のテーマ 「連日の猛暑に涼を入れる 峠八景三滝めぐり」
   峠駅〜滑川温泉〜滑川大滝(滝つぼまで)〜滑川鉱山跡〜姥湯分岐〜潜滝(滝つぼまで)
   〜薬師森展望台〜姥湯温泉〜×三階滝×〜峠駅
テーマが滝めぐりなので最短距離の周遊コースに滝ルートを組み込む
三階滝は崩壊により立ち入り禁止が続き、テーマ上名前のみ入れたが近づけず
                                       踏査日 2008年7月29日
地図はこちら

先週の登山は、お客様との話題によく挙がる「姥湯は一切経山の裏にある」を足で証明するこ
とができた。今回はこれまたニーズの高い”滝”がテーマである。

 ”峠八景”滑川大滝は”日本の滝100選”に選ばれており認知度が高いが、来店者の話を聞
いても「展望台から見た」人ばかり。この際あえて言う「展望台から見ても感動は小さい。百聞
は一見にしかず。滝つぼに下りてもらいたい。履物は濡れるがそんなもの替えを準備すれば
いいだけ。滝つぼ往復1時間(写真撮影の時間込)は必ず充実した感動を得られるはずだ」

 潜滝(もぐりたき)は”峠八景”として旧峠駅に手書きの絵看板にあった。詳しいいきさつは分
からないが、駅が有人だった頃の駅員さんや地区住人や愛好家で選んだのだろうと思う。

こういう味わい深い看板も今は少ないのだが…。潜滝は滑川からも姥湯からも離れた、登山
家ご用達の滝である。その登山自体下火なものだから潜滝はますます忘れられた滝になりか
けている。このレポートののち来訪者が増えればうれしいのが…。

 同じく”峠八景”三階滝は姥湯前の沢の上流にあり、アクセスは一番よい。しかし三階滝を含
む登山道が崩壊。この登山道は兵子まで続いていたが、今では兵子へ出る新ルートができ、
三階滝は取り残された。おそらく復旧はしないと思う。よって「登山プラン第U部 廃道探査、
やぶ尾根歩き、沢登りの冒険コース」に三階滝踏査を計画中として書き込んだ。立ち入り禁止
のはずだから無人の季節に自己責任で踏査したいと思うのだが、必ずとは断言できない。

そんなわけで滝を2つ。幾ばくかの涼となればと思う。


4:30峠駅前出発 〜 5:30滑川温泉

今回は交通機関を使わないので出発は自分次第。当然早出早帰りは登山の基本。夏至以降
日の出が短くなってきている。視界が、歩くのに安全な明るさになる4:30スタートした。交通機
関を使わないので、こちらに気づいた我が家のワンちゃんがついてくる。山菜採りが終わって
久しく、このコンビも久しぶり。この時点では犬を連れているように見えるのだが、いつの間に
か犬に連いていくこととなるのだ。(今の代のワンちゃんはギボシ丸君。ギボシとは山菜のウル
イ。白い犬の名を白いウルイから取る。先代のワンちゃんはクルミ嬢、コゴミ嬢、ミズナ嬢。も
ちろん山に縁の深い名前だ。(彼女たちとの山遊びは”2004年分のかわら版”に詳しい)

やはりこの瞬間に起きていると得した気分になる


カラ梅雨が明けて以来!!雨が降る日が続く。滑川温泉前で前川をのぞくが程よく増水してい
る。危険でない程度の増水は滝の流れを豪快にさせる。

 
滑川温泉にヒノキの露天風呂ができたらしいのでどんなもんかのぞこうかと思っていたが、同
伴者のワンちゃんが露天風呂の柵を越えて侵入しようとしているので、ワンちゃんを抱えあげ
吊橋を渡る。確かにヒノキ風呂を横目で確認はしたが、しっかりと見られず。

 

5:55滑川大滝展望台


展望台より。ほとんどの人がここで満足して?引き返してしまう。感動を味わいたければ滝つ
ぼまで降りるべき。ここに重いザックをデポする。(deposit=預ける。登山関係では、目的地へ
空身で行き、さっと帰ってくるため荷物を大地に預けることをいう)袖の長いものを1枚着こみ
デジカメと水筒のみで下に降りる。
※ 大滝の右上に見えるのが布引滝。融雪期や今日のような雨後の増水時に現れる。
   源頭は栂森。

 
下へ向かうことにより別の表情を見ることができる


大滝沢に下りる。履物は濡れるがそんなの気にしない


滝下は岩盤であり、深い滝つぼではないので真下に行ける。。水につかっても足首程度の深さ
で済む。幅のある滝だから、構図によりいろいろな表情をみせる。それではタップリ涼んでいた
だきましょう。

6:20滝つぼ到着



 









多くは語るまい。予想通りの増水で予定以上のいい絵が撮れたと思う。天気晴朗なり。
さて、水音が爆音である。隣に人がいても声が聞き取れないだろう。
そして水しぶきが跳ね上がり足もとから顔に霧が降る。
10分滞在で、涼しいを通り越し寒くなってくる。ここで秘密アイテム登場。
水筒の中身はあったかいカフェオーレ!!
汗をだらだらの登山が予想されるので水、麦茶、ポカリを1リットルずつ計3キログラムの冷た
い飲み物を背負ってきたが、この場所だけは冷えた体にあったかカフェオレ。複数のメンバー
でここに来る方はもちろん個人でも、是非あったか飲み物持参で。味わい深い思い出になると
思う。

6:30滝つぼ出発 〜 6:50大滝展望台

デポした荷物からおにぎりを取り出し朝食。さっきとは違い汗が出、暑い。山歩きはすべて自
己責任。冷たい飲料を飲み、長袖を脱ぐ。体調管理をしっかりすること。

7:00大滝展望台出発


滑川鉱山跡に向かう。大滝沢の対岸は自分のなかで1番のプラン「消失した栂森コースを求め
て」の栂森があるのだが頂上がわかりづらい。
大滝沢は幾重にも分岐するがたいした奥深さのない沢も名前がある。私は山菜採りのため山
に入るが、名前のない割と深さのある沢もあるのだ。名前がないから収穫後のメモには鉄塔1
番目沢とかミズバショウの沢だとか勝手につけている。さて、大滝沢の分岐から名前のわかる
ものでホラ貝沢・桶木沢・入道沢・潜滝沢・久蔵沢がある。名前があるということは必要とする
人がいるから。それは誰?なるほど滑川鉱山従事者か。こんな猫の額の場所に結構な人数が
いたのか。そして休みの日にでもひとつひとつ沢の踏査などしていたのだろうか。名前の由来
はなんだろう。久蔵沢は久蔵森という山が源流。潜滝沢は滝に命名した後につけたのだろう。
桶木沢は流れの方向や「桶」からみて炊事洗濯の水がとれる清流。ホラ貝沢は登山道から見
えないが、名前からして丸くえぐられたナメ岩の沢が推測される。入道沢はどうだろう。この沢
は途渉予定。なにかわかるだろうか。

やがて鉄鉱石の運び出しに使われた軌道レールが見えてくる

 

8:00 滑川鉱山跡



これは!明らかに人の作りし水甕である。パイプが見え、時折空気泡がでるのは、今もってし
っかりと水が流れ込んでいるから。これはほぼ間違いなく飲める水である。登山では水の確保
は優先事項。手持ちの地図や、ガイドブックには書かれていない。最後は被験、飲まねばわか
らない。というわけで生水をコップ2杯分は飲んだ。一両日中に結果がでるだろう。
今回のテーマ・涼、にもぴったりの報告ができた


鉱山小屋跡は藪に覆われている

8:30姥湯分岐

最短コースなら姥湯に向かうが今回のテーマの滝に出会うため弥兵衛平方面に向かう。
これまで桶木沢と地図にない名無し沢をいくつか途渉。こののち入道沢と潜滝沢を途渉予定。



分岐を過ぎると突然に道がよくなる。これより先は、わりとメジャーな弥兵衛平エリアだからだ
ろうか。木道、梯子、桟道が現れる。ワンちゃんも走り出す。


小さな沢を途渉

8:45標柱と沢出現

 
この標柱は潜滝が右とも左ともとれる。”ここが潜滝”と解釈できた人は何人いるだろう?
7:00におにぎり1個だったもので腹がすいてきてた。潜滝でご飯にしようと思って飴をなめつ
つここまで来たのだが、空腹が判断を誤らせたか。「潜滝はこの沢の次の沢」だから標柱に矢
印があると判断。(この沢が潜滝沢なら”ここが”と書いてもらいたかった)
先に進む。結果だけ先に言うと、この大きなペンキマークが

潜滝沢(8:45到着していた)

この上流部に名前のない滝がいくつもあるのだろう。目視はできないが滝の水音がいくつか聞
こえる。小さい沢を途渉(後でこれが久蔵沢だとわかるのだが)もした。滝音が聞こえるもので
疑問はもちつつ引き返せないでいた。そして、登山道は急登しはじめた。これを登れば弥兵衛
平まででてしまう。

9:25Uターンを決断

良い方向に考えたい。新しい発見もあったと。


途中見晴らしの良い岩場・砂地があった。そこでご飯にしよう。
奥に見えるゴリラづらの山は高倉山。高倉山はトロイデ火山。少し説明すると、ボコボコ固まっ
た溶岩が押し出されて、盛り上がるのがトロイデ火山の特徴。有名どころは”昭和新山”。テレ
ビで昭和新山ができる様子を見たことがある人は多いと思う。高倉山も同じようにしてできあが
った。特徴のあるゴリラづらはトロイデが所以。同定しやすく、姥湯からも兵子岩稜からも一切
経山からも確認できる。重宝する。


9:45見晴らしにて食事。ロスした時間はいくら考えても戻らない。時間を多めにとって頭も休
める10:00出発。頭を整理する、この見晴らしの真下にペンキマークがある。つまり、潜滝の
上あたりに自分はいるのである。

5分後10:05ペンキマーク再び



ザックをデポ。長袖をはおり、手袋とストックとで沢を進む。この沢は大石がごろごろで、履物を
濡らすことはないが、義経八艘飛びで岩を渡り、ストックバランスで岩を乗り移り、手袋をはめ
た手で岩によじ登る

2分後10:07潜滝到着





あまり動き回れない滝つぼなもので、構図が限られてる。見事なほど上から下にストーンと落
ちて終わり。一本気な頑固さを感じる。これぞ直瀑といった感じ。潜滝の名は、見ての通り一枚
岩の内部を潜っているように見えるからであろう。しかし、水の勢いが凄まじい。サイズは滑川
大滝にまるで及ばないが爆音は同じ程度。滝の下で及び腰で撮影する。水が突き刺さる気が
するのだ。増水していて迫力大だがそのうち鳥肌がたってきた。暑くて、でもここだけ寒い。後
でわかるのだが、薬師森展望台からもこの滝の爆音が聞こえるのだ。展望台からは凝視しな
いと見えないのだが。

10:20潜滝出発 〜

ということは

先に途渉したこの沢こそ入道沢である。さて、朝こちらに向かってずんずん歩いてきて、硫黄
臭を感じたらこの沢に出た。おそらくこの、もくもくと硫黄臭が広がることが入道雲を連想させ、
入道沢と名付けられたのではなかろうか

 〜 10:30姥湯分岐 〜 11:15薬師森展望台



滑川温泉に下るならほとんど下り。姥湯温泉に下るために登る。薬師森はタンコブだ。今日最
後の登り道。荷物の一部でもワンちゃんに持ってもらいたいものだが、そんな気配を察してか
やっこさんこちらに近づかない。そうこうするうち薬師森に着く。薬師森は、言うなれば姥湯の
裏山なのだが…。

  …誰もいない………

おそらく下の温泉はにぎわっているのだろうけれど、ちょっと裏山に登ってみようと思う人は一
人もいないのか!? ならば魅力をお伝えするしかない。数日後、数ヶ月後、この展望台がに
ぎわう日が来ればうれしいのだが。


展望台はケルンがいくつもある。ベンチまである。7月下旬でも栂森方向に雪が見える。
そして奥のほうのケルンへ進む。滝の音が聞こえる


ケルン左上に見える赤土がおにぎり食べた「潜滝上見晴らし」
そしてネズミ色の岩場
その直下、ここからも落水音聞こえる潜滝


薬師森展望台で、ゆっくり………本当にゆっくりしたが(鉱山跡で汲んだ水を沸かしてお茶して
たのだ)誰一人来ない。

13:00のんびりと姥湯到着



昨年の台風、その他で崩壊したところを工事している。かつて姥湯露天風呂そばにあった登山
口もいつの間にか宿の下に移っている。姥湯三階滝への登山道もかなり前に流されている。

そして舗装路を下り峠駅前へ向かう(2時間)



姥湯〜滑川間に鎮座するゴリラ面の高倉山。火山活動が休止してかなりたっているため樹木
が茂っている。


  参考データ
自分はあくまで登山の参考になればと思い、全行程を歩いているが、もちろん
車で登山口まで行き、目的地まで最短距離歩くのも選択肢のひとつとしてあると思う

@滑川大滝
滑川登山口 (20分) 展望台 (20分) 滝つぼ (20分) 展望台 (20分) 滑川登山口
 @滝下に10分いるとして全行程1時間30分

A潜滝
姥湯登山口 (45分) 薬師森 (30分) 姥湯分岐 (15分) 潜滝 (15分) 姥湯分岐
 (45分) 薬師森 (30分) 姥湯登山口
 A潜滝に10分、薬師森展望台に10分いるとして3時間20分
 B薬師森展望台のみ10分で引き返すとして1時間30分弱


  追記
古い絵葉書を発見しました。推測するに1970年代と思われる潜滝の写真です。
 
左が1970年代。右が2008年の写真。樹木が生長しているのわかりにくいですが、写真の登
山者の背部の巨岩が右の写真にありますよね。で巨岩の背部に潜滝の白布が!樹木の生長
により滝が途渉点から見えなくなっていたんです。自分の記憶の中にこの写真のイメージが残
っていたから今回の山行で沢を1本間違えてしまったようです。とはいえ、かつての「滝・巨岩・
登山者」のこの構図いいですね。これを再現するためには樹木を倒さねばいけませんが…。
                                                2008.8.7改訂