峠の力餅‐峠駅立売り ![]() 当年5月 峠駅立売り111周年 [ it's a traditional rural railway landscape ] 奥羽本線開通直後、明治34(1901)年から”峠の力餅”を峠駅にて販売を始めて 100余年。汽車から、電車に代わり、旅の情緒をあまり感じなくはなりましたが、 ”峠の力餅”はますます健在。スイッチバックが廃止され、トンネル内 (正しく言えばスノーシェッド内)にプラットホームがあるという、ちょっと 異世界へ飛び込んだような峠駅で、今日も変わらず力餅を売る声が響き渡ります。 ## ―目次― ## ・峠駅にて111年、駅立売りと峠駅時刻表 ・峠駅と駅立売りの変遷 ・駅立売り余話 30秒の物語〜売り手と買い手のやりとりは車掌さんの時計と笛次第 ・駅立売り(車窓販売)文化を残したい‐5代目熱く語る →GO (自己紹介のページへ) ## 峠駅にて111年、駅立売りと峠駅時刻表 ## ![]() 旧峠駅にて4代目の売り姿−平成前後の頃の写真 (国鉄、客車列車でなおかつ窓越し販売のほのぼのとした懐かしい情景) 残念ながら現在の立ち売りはほのぼのとはいかない
A黒字の便にてお求めになりたい方、要連絡。 (乗客のほぼ全員が通勤・通学者となっている電車運行時間で、販売対象とならないため普段は立ち売り を行っていないのが現状です) B赤字の便でも当方の事情により、販売できないこともあります。 また、まとまった数の購入をお望みの場合は、あらかじめ予約電話をお願いします。 [乗客数がひと桁ということが普通にある県境路線です。駅での販売個数がゼロの日も珍しくありません。過 去のデータが参考になったりもしません。峠の力餅は生菓子ですのでよほど勘働きがいい日でないと多め に準備できない昨今です。(せめて昼時間帯の電車の本数が多ければもう少し多く製造できるのですが …)] C冬期間、降雪等の事情により販売できないこともあります。 (電車が遅延しても情報の入らない無人駅です。5分・10分なら駅で待ちますが、1時間駅で待った結果ラ ジオにて運休を知るなどということもあります。21世紀になっても鉄道の難所であることには変わりないの です。) ※ 天候、その他の状況を勘案して準備しておりますが、電車販売の時間帯と車にて来 店される方が集中する時間帯(13時台)がかぶるもので一時的に力餅の品切れ状態と いうこともあります。また、13:23の電車ですべて売れた場合、4分後の13:27の電車 に販売できなくなることもあります。まれに13:23の電車が5分以上遅れる場合、逆も あります。停車時間を1分2分強引に?引き伸ばしてもらえたのは昔の話。停車時間が どんどん短縮される時代、予約も電車の1時間前位にいただけたほうが確実です。 なお、大きな駅みたいに、営業時間中ずっと駅構内にいるわけではありません。電車到 着にあわせて駅へ向かいますので、それ以外の時間帯は直接お店にお越しください。 ⇒峠駅より徒歩1分 ![]() ## 峠駅と駅立売りの変遷 ## 5代目のコメントをつけて… ![]() 2007年 スノーシェッド内の新峠駅にて4代目・5代目の立売り風景 4人対面シートのみ、窓が開閉可能なんです。これでこそ車窓販売 ![]() 1977年 上の写真の30年前。3代目・4代目の立売り風景 写真右上が、本線からのスノーシェッド(2009年現存してます) 4代目の奥に駅員が!さらに奥に貨物係まで!車両も手動ドア。懐かしい。 余談ですが、この時代の車両シートに「瓶の栓抜き」あるんです。飲料は瓶詰の時 代、王冠集めが子供の遊びだった。ああっ、車内に扇風機もあったこと思い出した! ![]() 1990年代??の4代目 前出2枚の写真のちょうど中間の時代か。車両のドアが自 動になっている。窓は全席開閉可ではあったかな。客車はもはや2・3両だけの編成に なっている。そのくせ機関車は重連。せっかくの重連なんだからたくさん牽いてくれた らカッコイイのだが。 ![]() 2004年 5代目の本音としては、近代的電車より一昔前の木造旅客列車で売ってみ たい ![]() 1990年 スイッチバック廃止イベント時の4代目 力餅が山積み!! EF71とED78の重連ももはや20年近く前の記憶 ![]() 1990年は全国の鉄ちゃんがスイッチバック4駅に集結(赤岩駅はお隣福島市なも ので「米沢市広報」では3駅しか列挙していない)峠駅下りホームの写真。 ![]() 1990年 峠駅前には娯楽施設はない。登山や湯治客がわずかにいるだけのはずの峠 駅だが…、そうこの方がたはスイッチバックを味わう目的でこの駅に降り立った。 ![]() 1971年 中央の老爺が当店3代目。背後に押しつけた雪の壁。現在と違い客車の編 成が長い。7・8両以上か。立売りも一人ではまかなえず。3代目(祖父)の右に3代 目の娘。(自分からみて伯母)総動員でこなしていた。 参考までに、写真奥はスイッチバック支線の行き止まり。でも行き止まりなのにスノ ーシェッド(雪よけ)があります。なぜか?ここ峠駅は文字通りどちらも坂を下ること になる。そのため、蒸気機関車の時代は機関車を前後入れ換えをおこなっていた。その ために線路最奥に退避線進入のためのポイントがあり、ポイントのためのスノーシェ ッドを設置したわけである。(このスノーシェッドも現存している) ![]() 1965年峠駅 自分の父である4代目が学生だった頃 スノーシェッドが現在とおん なじだ。ちょうど汽車が進入してるあたりが、スイッチバック廃止による駅の移動後 「当店築山庭園」として生まれ変わった。 ![]() 明治時代の峠駅?? 絵葉書らしい 「奥羽線峠停車場……是より姥湯温泉迄二里(桝形屋旅館)」と書いてある 架線がないから蒸気の時代、左奥のスノーシェッド内に転車台があり仕事をしていた ![]() 昭和40年代?? 冬の3代目立売りスタイル 力餅以外につまみやサイダー、カップ酒が販箱に入っている。 駅立売りは当然、国鉄より許可を得てやらないといけない。3代目著『峠の力餅八十年 の歩み』にある販売許可書の写しから書き出してみると… @大正三年の許可書−売品種類 茶、酒、鶏卵、菓子、餅、果物、サイダー、煙草 A昭和拾年の許可書−販売品目録 力餅、パン(おそらく乾パン)、羊羹、キャラメ ル、時雨の松、ゆべし、のし梅、ビール、金深サイダー、沖政宗、御茶、果実類(蜜 柑、梨、桃、林子、季節より)、煙草、郵便切手類、官製葉書 時代を感じる!!、今で言うキオスクを販箱に詰め込んで売っていたわけだ。 ![]() 昭和50年代?? 夏の4代目立売りスタイル 上の写真と同じ場所なんですが…駅看板が塗り替えられていますよね ![]() 2004年 スノーシェッド内の新駅での5代目立売りスタイル ## 駅立売り余話 30秒の物語〜売り手と買い手のやりとりは車掌さんの時計と笛次第 ## こぼれ話ぽろり ## おつり編 ## 30秒の停車時間。時間をロスする第一要因は代金の受け渡し。都会の大きな駅ならキオスク を利用、時間をロスして1本乗り遅れても10分も待てば次の電車が入ってくるだろう。田舎は そうはいかない。次の電車は3時間後という目に合う。こちら側の対策としては @商品の1本化 お客様が複数の商品を前に選択するロスタイムをなくし、お買い上げ金額の 暗算がすみやかに行える。 (ちなみに30年前までは力餅以外にも、お茶・ジュース・アルコール・おつまみさきいか・冷凍みかんなど売って いたし、停車時間もあった。スイッチバックがあった分なんとなくのんびりした旅を味わえたのだが…) Aおつりの細分化ストック B緊急手段 体を半分電車内に入れ、ドアを閉められないようにする(後で車掌さんににらま れます) 1万円渡されてもすぐにおつりに出せることによって次のお客様を求めることができるのですが ……お客様が、がま口から小銭をジャラジャラ「ひい、ふう、みい…」と始めたらこちらは動けな い。正直、時間が惜しい。車掌さんの懐中の時計が時を刻み、「ピィー」の笛音。冷や汗タラタ ラ、車掌さんとの冷戦勃発。お札でしたらおつりの準備は万全ですが(5秒で販売完了!)、小 銭を減らしたいというかたは、駅に着く前に準備していただけたらありがたいです(汗)。 こぼれ話ぽろり ## 領収書編 ## いつものように電車越しに餅を売っていたところ、電車から降りてきて餅をお買い求めになられ たかたが一言。「領収書きってください!」これにはビックリお目目パッチリ。初めての展開。ほ かのお客様に餅を売りつつ「あと10秒ほどで発車しますよ」と言うと、あわてて乗車。電車はト ンネルに吸い込まれていった。30秒の停車時間での乗客との真剣勝負。領収書きるにはちょ と時間が足りません。ゴメンナサイ。(どうしてもという方は電話で予約!?を) こぼれ話ぽろり ## カメラつきケイタイ編 ## 電車が停車。乗降口が開き、いろいろな人が顔を出す。足元かためた登山客。大きなバッグ の湯治客。鉄道写真家。駅看板の前で記念写真を撮って再び乗り込む人。よく分かっていな いが屋根に覆われた駅が珍しいと顔を出す人。それらのなかからお餅を買っていただけるか 否かを見極めるのが30秒間の密度の濃い楽しい仕事。お札を振りかざしてこちらに手を振る かたはものすごくありがたい。車内をスタスタ「こちらに近づいてきたぞ」と思ったらお手洗いに 入っていかれて「なんだ、違うのか」というオチもたびたび。ここまでは10年ほど前から変わら ぬ風景。そこに最近1・2年で大きな変化が。”カメラつきケイタイ”。一眼レフのごついカメラと 違いコンパクトなケイタイは電車のガラス越し・遠目にみるとお財布をにぎりしめているようにも 見えるのでお餅を売ろうと駆け寄るのですが、「パチリ」と撮られて、♪はいそれま〜で〜よ〜 ♪。まあ口コミの話題の材料にでもなれば、しめたものですが……(イヤ トイウワケデハナイノデスガ、セ メテ ヒトコト コトワッテ。マナーワルイバアイガタタアルモノデ……。ショウゾウケン ガアルノデハ?) こぼれ話ぽろり ## あ・うんの呼吸編 ## 駅で餅を売っていておもしろいなと思うことがいくつかある。車掌さんの個性というか、仕事の パターンを毎日のように観察できるのもそのひとつだ。自分は幼稚園のときから高校卒業まで 13年間、汽車で通学していたから、当時から現在まで現役の車掌さんはおおかたわかる。若 い車掌さんは只今じっくり観察中。車掌さんを観察するのは実は大変重要。お客さんの乗り降 りがないと、「早いんじゃないの〜」と思うくらいでドアを閉じる車掌さん。こちらは小走りに車内 をのぞいて「お餅いかがですか〜」とやらないと隅々まで乗客の確認ができない。1拍おいてド アを閉じる車掌さんなら隅々まで売り声をかけた後グルッと見回して再確認できる。1拍以上 のんびりおく車掌さん。売り声出して行ったり来たり2往復・3往復してもまだドアが閉まらないと 間延びしてしまう。こちらとしては車掌さんのテンポを知ったうえで電車の中をのぞかないと、売 れるものも売りそびれたりしちゃうわけ。車掌さんと呼吸を合わせるのは本当に難しい。停車 時間を引き延ばしたりして迷惑ばかりかけてすみません。改めて最敬礼。 (福知山線の脱線事故は、駅で立ち売りを行っている店という視点からも改めて考えされられるものがあります。運 転士も車掌も定時で安全に運行するのが第1義であることに同意します。当店としても、駅でのやりとりがよりスムー ズに行えるように努めたいと思います。) こぼれ話ぽろり ## 電車が雨を呼ぶ!?編 ## それは梅雨の時期に一番多い事実である。”泣き出しそうな空”という言い回しがあるが、降り そうで降らない天気というものがある。いよいよ降ってきたぞ、と思わせておいて、数分もすれ ば太陽が顔を出す。山では珍しくもない事象ではあるが、ここにひとつ、どうしても納得いかな い・したくない現象が…。それは、知る人ぞ知る”電車が雨を連れて来る”現実。これは、雷様 がゴロゴロ言いつつも雨は降ってなく、お日様が顔を出している時に起きる。雷様はターゲット (?)に動く電磁石、つまり電車にくっついて来る。電車が近づくと雨が降り、遠ざかると雨もや む。これは私的側面から見ると、”峠駅に餅を売りに行く時だけ雨が降る”ということ。今でこそ スノーシェッド内のホームだから業務上たいした影響はないものの、スイッチバックがあった 頃、ホームが屋根で覆われていなかった頃は、その一瞬の降雨に濡れながら餅を売った。し かも電車が遠ざかると雨もやむ。「なんでやねん」とぼやいてみたくもなった、うれしくない現象 である。 先代からの聞きかじり ## 旧型客車編 ## これは、まだ「マッチ箱」と呼ばれた客車を使用していた頃の話。窓は手動開閉、乗降口のドア も手動開閉なものだから、駅に停車しようと減速している汽車から飛び降りたり、発車して、加 速している汽車に飛び乗ったりする若い連中も少なくなかった。餅を売っていて困るのが、汽 車が動き出してから窓から顔を出して「餅をくれ」という客。汽車は徐々にスピードを増し、それ に追いすがって餅を差し出す。ひどいときは、餅を窓に投げ込んで、代金を投げ落としてもらっ たり、とあらっぽい取引。いや、もはや取引ともいえない気がする。代金をちょうどいただけたら まだよいが、おつりが生じるときが大変。おつりを渡しそびれたり、逆に餅を持ち逃げ(餅逃げ x)されたり。停車時間がタップリあるにもかかわらず、そうやってスリルを楽しむ人もいた。現 在の電車は、ドアはしっかりと閉じられアッという間に速度が上がるから、餅を差し出すこともで きない。そのかわりに、代金未収でげんこつをくらうようなことにはならないのだが…(電車停 車後、お早めにアピールをお願いします) 先代からの聞きかじり ## 紙幣は風に舞い、硬貨は雪に沈む ## わずか数十秒の停車時間。様々なドラマ?事件?が起きる。なんといっても冬。手袋をしたま まだとおつりを扱いづらいから直前に素手になるわけだが、手が強張ってしまって、受け取りそ こなった硬貨は雪に沈み、雪解け後のホームには硬貨がちらほら。紙幣は紙幣で、突然の地 吹雪にもっていかれ、♪飛んで飛んで飛んで飛んで飛んで〜回って回って回って回〜る〜♪ 先代からの聞きかじり ## トンネル、ボヤ火災編 ## ⇒スイッチバックって何? まだ、スイッチバックが廃止される前。福島側からの列車は、板谷駅を出た後、トンネルをくぐ って、本線から峠駅への引き込み線に入る。乗客の乗り降りを終え、後退してトンネル内のも う一つの引き込み線に入る。そして再び前進・本線に戻って次の大沢駅へ向かう。前述した旧 型客車が現役の時代の話。峠駅の引き込み線は、地形上の理由でトンネル仕様となった。旧 型客車のドアは手動開閉。トンネル引き込み線にて列車は10数秒停車。そして、洞窟内部に でも入ったような闇と冷気。おもわず、ドアを開け放し闇に包まれた空間を楽しんだ人は多い。 (今で言えば、津軽海峡線で思わず海底下車してしまった感覚。ちなみに5代目は洞窟や鉱山 跡好きときたもんだ)身を乗り出して、トンネルの壁に手をペタペタなどは誰もがやった。しばし ば、タバコのポイ捨てが思わぬ事故となった。線路の枕木は腐敗防止のため油を塗っている。 バラスト(砂利)敷きなので、トンネル内はジメジメせずに、枕木は乾いている。ポイ捨てタバコ が枕木に引火。次の列車が到着するまで誰もトンネル内の失火に気づかない。であるからし て、トンネル内部からの煙に気づいた段階ではかなりの勢い…。現在、スイッチバック廃止の 時点で引き込み線の線路も取り払われた。なんにしろ、タバコのポイ捨ては危険であるので す。 ![]() ・峠駅停車後、トンネル引き込み線へバックで進入する列車、その後本線へ入る。(右トンネル が上り本線、さらに右に下り本線)引き込み線は、現在線路はない。(入ってはいけないけれ ど、夏は涼しくて快適だろうな〜) 2011.4.1改訂 |
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